安全なエネルギー供給のための刊行物「月刊保安情報」発行40周年記念対談

今年、三ッ輪産業で販売店様・社員の保安教育のための刊行物「月刊保安情報」が発行40周年を迎えた。保安とは、お客さまに安全にLPガスをご使用いただくための日常的な点検業務などのことで、LPガス事業者にとっては欠かせない取り組みである。地域の安心・安全を守るために、長きにわたり当社の保安部門を支えてきたメンバーに話を聞いた。

対談参加者(左から)
穂積 (三ッ輪ホールディングス株式会社 社長室 社長付顧問)
古橋(三ッ輪産業株式会社 保安統括部 部長)
秋山(三ッ輪産業株式会社 保安統括部 課長)

ーー簡単な自己紹介をお願いします。

穂積:社長付顧問の穂積です。1980年に入社し、今年で勤続42年です。現場の所長・支店長職を経て当時の本社住機販売グループ・保安技術グループ・固形販売グループ3部門を兼務する部長として、本社勤務していた際に保安に関しての責任を負う立場になりました。

その後グループ会社である三ッ輪運輸の代表取締役社長を務め2年間ジャパンエナジックに転籍、取締役管理管掌を務め、2020年7月に現在の三ッ輪ホールディングスに戻り、現在に至ります。趣味はぶらり街歩きと居酒屋ひとり酒、戦国武将が活躍する歴史・時代劇小説を読むことにもはまっています。

古橋:保安統括部・部長の古橋です。2003年6月に入社し、勤続19年目です。前職でもLPガスに関わる販売事業者で約10年働き、その後当時の三ッ輪液化瓦斯に入社し藤沢営業所の係長を務めました。営業経験を経て2012年に保安部課長として配属されましたので、本社側の保安に関わってからそろそろ10年近くになります。休みの日は家にいて、家事やゲームをしていることが多いです。

秋山:私は1995年の4月に入社し、ちょうど12年経ったところで1度退社しました。同業他社に転職したのですが、12年間ずっと仕事をしてきた三ッ輪と比べると保安にコミットしきれていない点など、落差を感じることが多かったです。やはり三ッ輪の姿勢が自分に合っていると感じ、当時の液化瓦斯の所長にお話しして約3年弱で戻していただきました。小売の営業所長などのキャリアを経て、約5年ほど前に古橋部長から声をかけていただき保安部に移籍しました。

 ーー安全を守る保安の仕事は、正確で丁寧な仕事が求められるイメージがあります。やはりそのような強みを持っている方が向いているのでしょうか?

古橋: その通りだと思います。安全・安心を守る保安という仕事には信頼が欠かせません。当時の保安委員会で一緒に働いていた時の秋山の丁寧な仕事ぶりを知っていたので、保安に関わる業務に向いていると感じ、保安部へ来ないか?と、声をかけました。

 ーーみなさん長く三ッ輪で働かれていますが、働きやすいと思うポイントはどんなところですか?

穂積: 上司を含めた先輩や同期、後輩など、同僚に恵まれたのだと思います。成果を挙げるため、社員が力を合わせ一生懸命になったときには達成感ややりがいを感じます。また、販売店の皆様、取引メーカー、出入りする工事事業者、時には同業他社の方々からもご指導・ご支援をいただきました。社内外で良好な人間関係を築けることが、働きやすいと思うポイントのうちのひとつではないかと思います。

古橋:現在もエネルギー業界は環境激変下にありますが、これまでも時代に合わせて柔軟に変化し、対応していくことにやりがいを感じてきました。共に協力し合う仲間がいたからこそ乗り越えてこられましたし、何より「チャレンジさせてもらえる環境」が三ッ輪の良さだと感じています。もちろん失敗したり壁にぶち当たることもありますが、社員の話を聞き、社員の事を考えてくれる環境だからこそ長く働けているのではないでしょうか。

秋山:営業所に約19年間、保安統括部に約5年間在籍していますが、頼りになる上司・先輩・仲間の存在は大きいです。新卒から12年三ッ輪で働いたあと同業他社に転職しましたが、一度離れたことで改めて三ッ輪の良さを感じ、再入社しました。より良いサービス提供のために、年次関係なく社員同士がフラットに意見を出し合える環境だと感じます。

 ーー「保安業務」とは具体的にはどのような業務なのでしょうか。

古橋:細かく挙げるとキリがないのですが、各営業所の液石・高圧ガス・ガス小売事業などに関わる期限管理は特に重要な業務です。法定点検や各種(メーター調整期等)の期限、鋼管の維持など様々なことを管理していますが、いちばん重要なのは法令範囲ごとに違反がないかどうかを各営業所で確認することです。年に2回高圧ガス・液石・ガス小売事業の社内査察をやって、きちんと法令順守されているかどうかの確認をしています。もし順守されていない場合は是正し、必要に応じて今後の対策と合わせて行政にも報告が必要です。

遵守できていない場合は評価に影響するだけでなく、酷い場合は懲戒処分、最悪のケースでは営業所単位での販売事業停止という事態になってしまうことも。安全を担保することができなければ、お客様からの信頼も収益も全て失ってしまいます。

 ーー「保安」はエネルギー供給・販売の根幹なんですね。

秋山:お風呂や料理など、普段は当たり前に使っているエネルギーですが、使い方を誤ったり、我々のような販売事業者が保安業務を怠ったりすると大事故に繋がってしまう危険もあります。使ってくださっているお客様の安全を守るため、徹底した保安管理を継続的に行うことが必須です。

穂積「保安なくして、販売なし」ですね。エネルギーという危険物を販売する事業者にとって、どれだけ真摯に保安に取り組んでいるかということは、同業他社との差別化のポイントになり得ると思っています。また当社は直接お客様にLPガスを供給していることから、お客様との「顔の見えるお付き合い」を大切にしています。保安はエネルギーを供給するにあたり、お客様との信頼関係を構築するには絶対に欠かせない要素です。

 ーー特にどんなことを心がけていますか?

古橋:法令遵守は当然なので、それ以上の取り組みが大事だと思っています。自主保安のレベルを上げるために、国で決められている以上の厳しい独自基準を設けています。例えばメーター交換の期限は基本的に10年という長いスパンですが、1日でも超えたら期限切れになってしまう。それを防ぐため、常に前倒しで交換予定を立てています。常に時間的な余裕を持っておけば、不測の事態が起きたとしても対応することができます。行政が求めているのは『法令遵守を前提とした更に高いレベルの自主保安』です。LPガス事業者にとって保安は最重要視すべきことのひとつだと思います。

秋山:1号業務から7号業務まである保安業務を全て自社対応することは難しいので、配送業務は外注することもあります。外注先の業者さんに供給設備の点検をしてもらう際、委託した保安業務に関しても任せきりにせず、必ず我々が責任を持って点検内容の確認と対策を行っています。

 ーー直接お客様と顔をあわせる機会が少ない中、どのようなことがモチベーションになっていますか?

秋山:本社ではどうしてもお客様との接点は減ってしまいます。その分、営業所で4年に1回の点検などの際にお客様からいただく感謝の言葉が何よりありがたく、励みになります。

古橋:保安は「やって当たり前」で、「(事故などが)何も起きない」ということを目指す業務です。価値を可視化する難しさはありますが、真摯に取り組み続けることで、協会団体から表彰されることがあり、それをきっかけに営業所の保安レベルが向上したことを感じられた時は嬉しいです。実際に日々の地道な取り組みを営業所単位でも個人単位でも評価いただいていますし、我々の取り組みや指導によって営業所の保安レベルが向上し、エネルギーを使ってくださっているお客様の安心・安全を守れている、ということに誇りを持っています。

昭和57年から現在まで、毎月発行され続けている「保安情報」。発行開始直後の紙面。

ーー「月間保安情報」は販売店様にどのように活用されているのでしょうか?

穂積:保安に特化した資料を長く継続発行しているLPガス事業者は、ほかに聞いたことがなく、当社独自の取り組みと言えるのではないでしょうか。今から約40年前は、LPガス事故発生数のピークで、年間の事故件数は約800件を記録していました、それを受け官民協力してLPガス事故を無くしていこうという活動の一環として、当社では「月間保安情報」を発行したのが始まりでした。

それから40年継続し現在に至っています。「保安情報」の発行は、数多の新しい保安に関する情報をいち早くキャッチし、それを現場に伝えられるという強いメリットがあります。そのため「保安情報」は、社内の研修だけでなく、営業活動の重要なツールとしても活用されてきました。販売店様と共有すべき情報をいち早く伝えることが事故の減少に寄与する取り組みとして評価いただいていたからこそ、今日まで長く続いているのではないかと思います。

「保安情報」は、当社の営業マン経由で毎月取引先にお渡ししているのですが、たまに忘れたりすると「なんで今月は持ってこないんだ」と言われてしまうこともありました。(笑)
各号にナンバリングしてあるので、第1号からずっとファイルに綴ってくださっている方もいて、足りないナンバーがあると「№○○が抜けているので持って来て欲しい」というお声をいただいたりもします。

保安に関する情報は何度も繰り返し共有し徹底することが大切なので、現在も販売店様だけでなく当社の小売部門でも年間保安教育のためのツールとして活用されています。

ーー実際に販売店様に喜ばれる情報とはどのようなものなのでしょうか。

古橋:代表的なところでは法令改正関連でしょうか。解釈が複雑なので、情報をわかりやすく簡略化して、ぱっと見て理解できる状態まで噛み砕いて伝えることを心がけています。

ーー40年もの間情報を発信し続けるには、苦労もあるのでは。

秋山:今までは毎年国から出る「保安対策指針」の内容を中心に扱っていたのですが、代替する「液化石油ガス安全高度化計画2030」の策定とともに毎年発行ではなくなりました。それに伴い、今春からは本当に販売店さんに役立つ基本的な内容を見直し、取り入れています。販売店様からのご要望やリクエストがあればぜひ反映したいので、営業担当経由でお声をいただきたいですね。

 ーーこれからもご活用いただけるよう、発信を続けていただければと思います。最後に一言お願いします!

穂積:先ほど申し上げた通り、保安に関する情報は繰り返し共有・徹底することが大変重要です。そのため、時には同じ内容を何度も掲載することも必要となります。保安情報の中で特にLPガス事故の重大さを実感できるのは、ヒヤリハット事例集ではないかと思います。具体的な事故事例は参考になるので、社内研修用に利用することはもちろん、販売店様と共通の話題を互いに話し合うことで関係を深めていく営業ツールとして引き続き使っていただければ嬉しいなと思います。

秋山:毎月保安統括部で意見やアイデアを出し合い、試行錯誤しながら「保安情報」を作成しています。営業マンを通じて販売店様の保安教育に活用していただけたら、私たちにとっても非常に励みになります。ぜひ毎月活用していただければと思います。

古橋:販売店様の保安レベルや知識の向上に繋がるような内容を発信していくことで、地域への安心・安全なエネルギー供給の一助になれば幸いです。今後も保安業務にコミットするとともに、販売店様を含めた地域全体のお役に立てる有益な情報発信に努めてまいります。